さて、神戸デビューです。
やはり客あしらいの上手いマスターでした。
「いらっしゃい・・・あれ?初めてやな。ま、ここ座り。」とスムーズに促され、お酒が進むに連れ、アタシはゲイバーデビュー前後の体験を話したの。
「ドキドキしながらゲイ雑誌を買い、初めて行ったお店のマスターとデキて、その後、不特定多数と関係を重ねて・・・それが虚しくなった。ゲイなんてそんなものか?」と・・・。
そしたらね、マスターに一笑されました。
「アンタ真面目な子やなぁ。そんなんなぁ、男女の世界も一緒やで。自分の中にゲイがまだ“特殊”やっちゅう感覚があるんちゃう?」
そしてこう続けたの。
「こない考えてみ。“男の子はうどん食べなさい。”“なんで?僕、蕎麦のほうが好きやねん。”“あかんあかん、男やねんからうどんを食べるんや。”・・・そう言われながらも、結局蕎麦が好きでうどんは食われへん。ゲイなんて、そんなもんや。」
・・・まさに眼からウロコ!!
それまで、長ぁ~~~い間悩んでいたことが急に馬鹿らしくなったの。
今でもこのマスターには感謝しているし、このお店で知り合った方とは初めて“お付き合い”する仲にもなったの。
暫くして、アタシは東京に転勤し、それから間もなくあの阪神淡路大震災が起きたのです。
三宮の見慣れた街角が無残な姿になっているのをTVで観て、すぐさま「T」はどうなったのか心配しました。
どうやら、お店は無くなったようなのですが、マスターのご無事を今でも願っています。
うどんと蕎麦 ~おしまい~
つづく